日本の食品市場を中心に食品や食品関連技術を専門としたアドバイザリーコンサルタント 久保村 喜代子

 
クボムラーナ

Kubomura Food Advisory Consultants Japan Food Innovation 久保村食文化研究所

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食文化と食品添加物考

第八回 「果実酸」

忙しいオフィスの仕事に追われている毎日なのに、週末は当然?一人の主婦の姿に戻る。原稿の締切日の為に一生懸命、タイプを打っている。外は、梅雨の真っ只中、冷たい雨が、折角の休日なのに、振り続けている。

いやぁー、忙しいのなんのって……。先ほどまで何をしていたかって?

そんなの読者の皆さん、聞きなくないかもしれませんねぇ……。でも、私はお江戸の生まれ、梅雨の合間に毎年何をしなければいけないかといえば、母から教わった梅干しと梅酒作りをすることなのであります。何故か、先週母は、年を重ねて、弱った体なのに我が家のために、梅を用意してくれた。「この忙しいのに、面倒くさい、まったく!」そう言いながら、食物の昔からの言い伝えを大事にするのは良い事、これでも分かっているから諦めた。学生時代の母の手作りのお弁当には、いつも梅干しの日の丸が懐かしい。そうそう、こんな諺もある。「医者を殺すには、刃物はいらぬ、朝、昼、夕に梅干しを食え。」……というわけで、梅干し5㌔、梅酒3升と毎年、この季節の作業が終わった。ちなみに、我が家は子供がいないので、二人きり、毎年のこの梅干しと、梅酒が溜まりに溜まって、困ってしまうが、母の愛情を受けなければならない。昔の人は、何故かこうした食文化を信じ、守っているから、不思議。

 

梅干しの酸っぱさの素はクエン酸?大学時代、授業で教わったTCA回路(クエン酸回路)を思い出した。糖質や、脂質、たん白質をたくさん摂取してもTCA回路が回らなければ、大問題である。効率よく回転するには?どうも今回の話題、果実酸やリンゴ酸を意図的に摂取すること、このTCA回路を活性化するらしい。大体、こうした長い間、人々の中で培われてきた食文化は、体にいいはずだ。そういえば、このリンゴ酸だって、聖書にもでてくる林檎と蜂蜜でつくるバーモンド健康法だ。

まず、「酸」と「アルカリ」とは、理系大学出身の人々に限らず、日常よく耳にする言葉であるから、その本来の意味はよく知られていない。学生時代に習っただけで、説明するのは、思いの他、難儀である。この基準の言葉は、液体に含まれている「水素イオン濃度(H+)」一般にpH・ペーハーという単位で表現されており、全体でゼロから14目盛りがあり、この目盛りの真ん中が、pH7.0「中性」、それ以上の範囲を「アルカリ性」、それ以下を「酸性」と決めている。通常、レシピー開発する場合は、このpHの変化に弱く、pHのちょっとした変化にも変質したりして、本来の性質を失ってしまったりする。このために、「酸味の強い果実」や「pHに大きく影響する添加物」などを用いる場合には、添加する「タイミング」や、「温度」には十分注意しなければならない。生(体)物中には、酸性を持つ有機化合物全体を総称する有機酸が存在する。また、これに対する「酸」が、無機物である。どうもこの言葉、いかにもこの有機酸が安全なようである。ただ、この有機酸、使い方によっては、毒・劇物取締法の指定を受ける物質にもなっている。例えば、蟻や蜂の体内に存在にしているギ酸は、一部の植物にも存在しているが、ごく微量ならば有益であるのに、一定量を超えると、危険物資になる。また、一部医薬品にも使用されているが、繊維染色助剤や仕上げ剤、皮革処理剤など主な用途は工業用で広く利用されている。

普段、なんの疑いもなく、酸味料やpH調整剤の原材料名を「有機酸」と呼んでいるが、食品業界でなければ、「酸」と呼ばれるとまちまちである。現在、食品添加物の中で酸味料として認められているものは、28品目であり、その中で結晶水の有無や、光学的活性差による数も含まれており、それを同一種とすると、23品目に整理され、この内の3品目は、化学的合成品以外の食品添加物、いわゆる天然物(イタコン酸、α―ケトグルタール酸、フィチン酸)。であり、化学的合成品としての酸味料の数は、25品目となる。さらに、それを有機酸とその塩類を含む系に区別すると、有機酸系に属する物は23品目となる。この場合、この有機酸の主成分は、果実の酸味を主体とするものが多く、この「果実酸」という言葉を慣用名として、名付けられ、分かりやすくなった。まあ、これが、食品添加物であるがゆえだ。この果実酸、とかく、沢山の果実(ミカン、リンゴ、ブドウ、イチゴ、モモ、ナシ)や野菜、穀物類の玄米、大豆、小麦、または海産物やさらに、発酵食品(味噌、醤油、酒、ワイン、ビール、食酢)に含まれていて、認可を受け、主に酸味料、pH調整に利用されるカルボン酸とその塩類のことを呼んでいる。また、環境保護を考えると、この果実酸は、分散して炭酸ガスと水にあるので、無公害の面も有している。

 

この果実酸を食文化で追いかけてみたい。

最近、特に何度も見ているテレビの料理番組の話を!それも昨今のグルメブームのものとは、ひと味違った料理番組だ。イギリスのBBCが、フランス料理を特集していた。何故に?「イギリス人がフランス料理を?」それは、ワインビネガーの使い方を示していた。あの酸っぱいワインビネガーでソースを作る時、バターと共に芸術品に仕上げるのだった。でも出来上がったソースは、決して酸っぱくなくて、マイルドで非常に美味しいと、案内役の女優が説明していた。

確かに、この果実酸の酸味は不思議だ。食酢の酢酸、ミカンやウメの中のクエン酸、リンゴの中にあるリンゴ酸、ブドウの中の酒石酸、乳酸菌の発酵によって出来る乳酸など美味しさを支配する風味である。この他、果実酸には植物に存在するフマル酸、太古の樹脂が埋まって石灰化して、変質して化石となった琥珀から名付けられたコハク酸で、ナトリウム塩は、貝類の旨味の主成分である。現に、私の大好きな夏ミカンは、あんなに甘くて、さわやかで、強い酸味であるが、バランスの味がするから、面白い。調味料の中で、代表的な酢は、果実酸がメインであるが、聖書以前太古の昔から使用されている。その理由は、酢が全く自然の過程から経て、作られるものであり、酵母菌は絶えず空中を浮遊しているから、糖分を含んだ液体においては、例えば果汁、麦芽汁、蜂蜜水など、極々自然な条件で、発酵して、アルコールが発生すれば、その液体を密封しておかない限り、細菌が作用して、アルコールを酸化させて、酢酸に変え、Vinegarが出来る。また、このアルコールを酸化させる時、細菌は酸素を必要とするので、例えばワインなどの栓を抜いて空気に晒しておいても酸っぱくならないわけである。

 

この食文化から生まれた酢は、世界中様々な種類がある。グルメを気取るなら、調味料にも凝らなければならない。お洒落の決め手は、ネクタイやアクセサリーの小物、グルメ街道を突進するなら、脇役を決めなくてはいけない。そんな時、究めてこそは、とにかく醸造酢である。

米酢に始まり、ワインビネガーに加えて、シェリーやサイダービネガー(リンゴ酢)ハーブ入り(タラゴン・ディル・バジル・エシャロット)、果実風味のあるものなど多彩である。この醸造酢は、人類が製造した調味料の中で、塩に次いで、歴史が古い。

では、現在の果実酸は?科学とバイオテクノロジーの力で果実酸それぞれの誘導体と、応用製剤が作られている。代表的な用途と言えば、嗜好性を高める「酸味料」、そして、酸味料以外に「pH調整剤」としての用途がある。また、コハク酸や果実酸塩類には、酸味料、pH調整剤と共に、「調味料」として使用される物がある。

食品添加物の「酸味料」の定義は、「食品の製造、または加工の工程で、酸味の付与または、増強による味覚の向上または改善のために使用される食品添加物および製材」をいうが、加工食品の嗜好品の向上が見込まれる。

現在、酸味の表現については、舌メーターであるが、これらの果実酸の酸味の状態については、研究され続けており、これらがレシピー開発に利用されている。特に果実の美味しさからの理解で、味覚的には糖と酸のバランスや、果実酸の複合など活用されている。

 

そうそう最近のTVコマーシャルの「摘んで、刻んで、さあ、混ぜるだけ!」のキャッチ、浅漬けの素、もう試されましたか?美味しい漬物は、様々な果実酸のハーモニーから作られている。これに対応するように乳酸・リンゴ酸・クエン酸の複合の食添が販売されて、好評を得ている。

もう一つの果実酸で特集しなければいけないことは、pH調整による食品の品質安定と向上である。冒頭にほんの少しpHの話をしたが、食品を問わず、全ての物資にはpHがあるが、食品や食品素材などのpH値を人為的に上方または、下方に誘導すると、何らかの形で、それらの物性に変化が生じてしまう。まして、加工食品の製造時においてしかりである。

もしかしたら、この変化は、食品の品質を安定、もしくはより一層良い方向に導く場合もある。どんな物質でも、そのものの適切なpH管理は、非常に重要なことである。事実、製造工程や食品の管理にpHの調整を導入するのが、困難であったが、果実酸による緩衡pH調整列が開発されてきた。そして、食品の商品価値を高めていった。

例えば、茹で麺の品質向上・緑黄色野菜の漬物の緑色保持・大根の褐変防止・煮野菜の食感向上・力性ソーダによる大根の皮剥き後の中和処理・ジャムの安定ゲル化などで、実に重宝されている。

この他、pH管理で保存性が向上される。食中毒の原因細菌や、病原菌の発育は、それらの微生物にとって、中性が一番至適である。そのためにアルカリサイドに環境条件を誘導することも良いが、エグ味が心配で一部の中華麺しか利用されていない。その点においては、酸性サイドにおいて、極端な場合を除いて、適度な酸味は、風味を良くする。さらに、これらの果実酸には、それ自体、比較的高pH値でも微生物への発育阻止効果がある。

食品添加物メーカーにおいては、果実酸単体だけでなく、応用製剤も研究され、販売されているので、レシピー開発には、教授して戴く方が良い。私は、よくデミグラスソースの工業用レシピー開発において、ほんの少しクエン酸を加えるが、この場合決まって質問を頂戴する。「何故、加えるんですか?」風味作りの才人になろうとすると、ほんの少しの酸味のパンチは、微妙な味わいを作るから……。

 

最後に読者の皆さんへ。

食べ物って不思議である。どこかで食文化が異なってくるが、日本酒は乳酸、ワインは酒石酸、どうなっているのだろうか?

ご意見を伺えると、嬉しいし、お待ちしている。

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