日本の食品市場を中心に食品や食品関連技術を専門としたアドバイザリーコンサルタント 久保村 喜代子

 
クボムラーナ

Kubomura Food Advisory Consultants Japan Food Innovation 久保村食文化研究所

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食文化と食品添加物考

第九回「卵の話(その1)」

新聞社へ連載を掲載して暫しの時が過ぎた。
昨今では、海外出張でもITのお蔭で便利になった。
懐かしい…..

昨日、海外出張のソウルから帰国して、食文化カルチャーショックにかかってしまった。仕事ゆえ、各所旧跡観光は、海外に行ってもほとんどする時間がない。仕事人間?それとも食べる事が大好きだから?
恒例の海外出張では、それ行けぇー、いざ出陣スーパーマーケットである。ソウルも近代都市、日本と一緒で昔からの食料品店、露店、近代スーパーマーケット、百貨店、コンビニエンスストアなどたくさんあるので驚いた。知らないというはとにかく恐ろしいことだ。どんなガイドブックを見ても、名物料理のなにがしかだけで、今のソウル市民の本当の食品事情が分からないからおかしい。

 

しかし、真実どのような状態かって…。ほんの数年か前の日本のスーパーマーケットを思い起こして欲しい。かくいう私は、そこらの有名なスーパーマーケットより魚河岸が大好きだ。そんなこんなコンビニエンスストア蔓延の今日この頃だ。ソウルも同じ症状を辿っているから考えさせられる。
唯一、気が付くことは、加工食品の値段が高いこと、そして、欧米の食生活が韓国にも入ってきて、伝統の食文化が急激に変化していることである。そして、子供の肥満の問題がおきている。皆さんご存知のキムチ、いや美味しいのなんのって!美味しい理由は?いろいろ探ってみたが、あの微妙な味わいは精製度8%の塩のようである。たくさんのミネラルと乳酸発酵の風味つくりの科学から出来上がったに違いない。同じ原料を使用しても日本では難しいを悟った。
一番驚いたのは、卵の値段であった。日本と同じように、卵は韓国でも貴重品であったのに、今は、スーパーマーケットの目玉商品であるから、興味が湧く。どうも海外からの飼料によるコントロールされた飼育方法がすでに採用されていたのである。お蔭で、沢山の人々が栄養失調にならずに済んでいる事か!今日、1週間分の買い物に行った。なんと卵1パック10個入り88円!暴落気味である。生産者の気持ちを察すると、胸が痛む今日この頃である。
何故、この鶏卵の話をしたかったのか?それは食品の生産ライン用レシピ―開発の折、鶏卵の加工品、加工卵を原材料としてたくさん使用するからだ。本来ひとつひとつ丁寧に割卵して使用していたものが、現在は、冷凍・冷却、濃縮、あるいは乾燥などの全卵、卵黄、卵白などが、製菓、練製品、乳製品、畜肉製品、製パン、製麺、製薬、外食産業など盛んに使用されるようになった。それらは、食品原材料なのか、それとも、食品添加物なのだろうか…?製菓にしろ、製パンにしろ、卵の一次加工品のメニューにしろ、とにかく便利になったし、廉価になった。お蔭で消費者としては、恩恵に預かっている。

 

卵の歴史を少し。
家畜の歴史は、世界中見ても家犬に次いで、馴養は古いといわれている。それも東南アジアから始まったと考えられており、我が国では明治以降には、唯一の畜産物利用であった。病気になったり、滋養のためか何か活力を付けたい時、生卵を飲んだりしたものである。特に鶏卵は、大量生産されるようになってからは実に重宝されている。栄養価が高く、ビタミンC以外は十分な栄養素を含んでおり、特にアミノ酸の組織は、どんな食品よりも優れているが特徴である。
採卵の最優良品種といわれているレグホーン種は、古代ローマで作成されて、近代に至って、アメリカで淘汰育成されたものである。私の友人の英国人は、この養鶏の技術を南アフリカからアメリカへ導入させ、大量養鶏の話を時々聞くが、初期の頃と、現在とどれだけの違いが生まれていることだろう。
ちなみに貯蔵のための乾燥卵は、アメリカで1865年に特許、1878年には製造が始まり、二十世紀になると中国で乾燥卵製造が急激に起こり、日本の明治・大正時代の鶏卵市場を席巻したのである。冷凍卵は、第二次世界大戦の後にさかんになり、欧米ではさかんに製造されているが、日本では比較的少ない。この冷凍卵を食品業界に戻りたての頃、レシピー開発するのに使用して、驚愕したのをよく覚えている。
現在の日本では、養鶏で彩肉、採卵の両方については、専門経営と共に大規模化しつつある。いや、大規模そのもので、スーパーマーケットの卵のコーナーで、昔の農家の庭先でミミズやその他の餌をついばみ、十分運動した鶏の生んだ卵を手に入れるのは実に難しくなっている。
現に、卵の風味はもともと無味に近く香りもほとんど無く、むしろ卵黄の脂質からくるものとされているが、そのままでなく、他の原材料と混合して加熱処理すると、その食品、菓子類などの特有の風味を構成する作用を持っていると言われているが…、昨今、いやに卵が水っぽく感じられるのは、私だけだろうか?
友人の英国人は、アメリカ人は大量飼育から大量生産へ持っていったが、日本人の方が、はるかに上手だと語っている。彼らは日本に住んでいて、卵の価格を見るたびに異常に感じると、何度も私に告げた。現に、先日に卵の価格が大暴落してしまった。こんな狭い土地の国で、鶏はそんなに放し飼いにしていられないのは事実だ。
日本の養鶏は、飼料の問題と、いちはやく昭和37年に鶏卵品目の自由化が実施されてから、様相が変化した。現在、鶏は全天候型の鶏舎の中で一生太陽を見ることなど無い。雨が降らず、温度一定、飼育は全て機械化されている。実際、生まれてから全てが自動コントロール。飼料の量から、一生に生む卵の数まで、管理されている。その上、昨今の円高。
戦後初期の頃の養鶏に巨大商社が飼育に介入し始めたのであった。そして、安い飼料が手に入るようになった。

 

ほんの少し雑談を。
事実か誠かは分からないが、わが国で愛されているあのマヨネーズは、欧米人はまずいというが、何故まずいかというと、日本は飼料の中に魚粉を加えるからだと聞く。本当に生臭いのだろうか?このような飼料価格の長期安定や、技術革新で、卵の消費者の増加に対応した生産・流通が可能になった。ただ、哀れなのは鶏だ。時々、こんな話をする。私達の加工食品の原材料の中で、動物性のものは、何らかの形で生産が、生き物でなく、明らかに“物”と解釈しなければいけない。例えば、牛にも同様な現象が起きている。工業化された牛は、大量生産のライン化で 殺されるようになったのが、自動車のライン化よりもはるかに前であった。
鶏も同じで“物”とならなければいけなかった。一生の時期もコントロールされ、生む卵の数、飼料を食べる量も…、こんな不自然な中、やっぱり人間と同じストレスで卵が生めなくなってしまう。
そんな時、どうするかって?
ストレスを解消しなければいけないのが、為す術も無いのだろうか?現在では、調整換羽(強制)と呼ばれ、絶食を強いられる。始め、何分の一のエサ、徐々に水だけで数週間すごさなければならない。もう鶏にとっては、苦しいのなんのって、辛いであろう。立ってることもままならない。栄養分が無いのだから、痩せてしまうし、羽もみんな抜けてしまう。見るも無残な状態だ。このような時の鶏舎の環境管理を十分しなければ、皆病気になってしまう。
そして後に、少しずつ餌を与えて、コントロールしていくと、羽も生え変わって、元気になって来る。やはり、生き物・動物だ。卵を再度生めるようになった。回復するのに、何週間か必要だった。でも元に戻ったのである。これを一生のうち数回経験して、寿命を終える。現在は生産管理であって、春夏秋冬の季節と、暦を兼ね合わせて、この換羽の時期を決定すると、働く人の労働管理も出来る。これら、夏のお盆の時期をめざして実施される。昔は、夏はほとんど生まなかったのに、今ではこの違いだ。
だいぶ前、おかしなことを言われてしまった。ダイエットとか、さまざまな美容法があるが、水だけの絶食法は、体に良いかもしれない。この鶏のように、髪の毛が抜けるほど辛い思いをしたら、若返る事が出来るかもしれない。「久保村さん、鶏と同じように体験したら、もしかしたら、たまご、卵、子供が授かるかも知れませんよ。それにずっと綺麗になれるかも…!」いやぁ、本当かもしれないが、食べずにいられない。中年肥りも止められない低タラクくぶりが、現実である。怒る気にもなれない。

 

次回もこの卵の話を続けたい。
平成時代の初期に作られた「延喜式」によると、神に供える米、塩などと共に、「鶏弐翼、卵二十枚」と記されているそうであるが、既に食べていたのである。
室町時代末期から安土桃山時代になって、南蛮菓子が渡来し、現在の長崎カステラ、佐賀の入芳露、京都の蕎麦ぼうろ、博多の卵鶏素麺の前身のお菓子などに卵が使われるようになった。
それが、江戸時代になって、卵焼き、落とし卵の味噌汁などとして、日常食卓に見られるようになったが、まだまだ一般の人々には、遠い存在であった。将軍家や領主の病気見舞いに献上されるのがほとんどだった。
しかし、握り寿司、卵焼き、出し巻卵が現れたのもこの頃で、やがて明治になってから食生活も欧米化して、本格的に卵を食べるようになった、では、今加工食品の中でどのような形態で卵が使用されているだろうか?昨日もフランスのとある食品添加物の会社から、売り込みのサンプルが来た。製菓材料用に開発された卵黄であるが、日本でまだ使用されていない。
それに、レシピーへの応用の方法が明記されていないので困ってしまう
どうしよう。お行儀悪く、一つ、指で突っ込んでなめてみた。美味しいケーキの卵の風味、それも甘~い香りがした。明らかに生の卵とは違う、きっと便利なのだろう?

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