日本の食品市場を中心に食品や食品関連技術を専門としたアドバイザリーコンサルタント 久保村 喜代子

 
クボムラーナ

Kubomura Food Advisory Consultants Japan Food Innovation 久保村食文化研究所

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論文・出版物

緊急レポート・協和香料化学事件考

専門性が孤立を招く

食品香料国際リストにはおびただしい原料が六〇〇〇種。しかし、各国の行政機関および香料工業会の認可状況はまちまち。今回の協和香料事件では食品の国際化への対応の遅れがわが国のみならず、世界的に急務である事が浮き彫りとなった。では、日本および世界の「香料」業界はどうなっているのか。

日本は、香料においては諸外国でも有数の厳しい規制を実施していると言われて久しいにもかかわらず、今回の添加物(香料)の製造にかかわる食品衛生法違反事件となった。その背景には食品香料の調合は、豊富な知識と経験、原料素材の匂いや味の特徴、物性、科学的性質、閾値、濃度による官能特性、各種基材における最適な濃度や、芸術的センスや創造性、最終製品に科学的知識と安全性および法律上の知識が必需とされており、その専門性の高さが職種を孤立させてしてしまったと言える。

 

通常、食品香料業界で「安全性が保持されている」理由として次の事項が上げられる。

(1)食品に使用されるフレーバー物質の使用濃度は、非常に低い。通常は、一〇〇ppm以下で使用されるが、一ppm以下でも十分効果を発揮するものもある。個々の物質の年間使用量は、世界全体でも年間一〇〇〇キログラムを超えるものは稀。これらの八〇%は年間使用量五〇キログラム以下。

(2)フレーバー物質は、過剰使用は官能的に不快となり、自ずと限界が存在。自然な理由で、人の摂取量は低く抑えられている。

(3)食品自体、天然のフレーバー物質を多く含有。したがってそれらのボリュームは“香料”として添加されるより多い。

今回発表された違反添加物の分量も天然界やそれぞれの食品に存在する量とどのように比較したら良いか難しい判断となってしまう。

 

世界的な香料の規制はIOFI(食品香料の安全性と法規に対応する非営利の国際組織)が提案し、国連の一機関であるCAC〈FAO(国連食糧農業機関)/WHO(世界保健機関)合同食品規格委員会〉により採用されている国際食品規格(Codex Alimentarius)でその記述を見る事ができる。

(1)ナチュラル・フレーバー

いわゆる天然香料、精油、オレオレジンなど、各種天然原料より物理手段などにより得られたフレーバー物質の混合物。

(2)チュラル・フレーバーリング物質

天然原料より物理的な手段を利用して得られた単一のフレーバー物質(単離香料と呼称している)。

(3)ネイチャー・アイデンティカル・フレーバーリング物質

合成のフレーバー物質であるが、人が安全に摂取している食品中に存在するものと化学的に同一のもの

(4)アーティフィシャル・フレーバーリング物質

合成のフレーバー物質で人が安全に摂取している食品中には、未だ発見されていないもの。

世界中の大方の国々では、(1)の天然香料は、食品と同等に扱われていて、広く利用されている。使用する天然基原物質のリストが作られており、これらの構成成分の禁止、または制限する場合があるが、実際には厳しい規制は存在していない。

しかし、単一のフレーバー物質である(2)(3)(4)については多くの国が法律で規制を実施している。

 

規制方式には(1)ポジティブリスト、(2)ネガティブリスト、(3)ミックスシステムの三つがある。日本は、使用が認められる物質を収載するポジティブリスト方式であり、反対に使用を禁止する物質リストで規制するのはネガティブリスト方式と言われる。

米国はポジティブリスト方式であり、欧州の国々ではミックスシステム方式を利用している。

実際、輸出国では許可されているが日本では不許可、したがって輸入不可の例は日常茶飯事である。

香料に関しては、フレーバーの定義そのものにも差異が存在する。米国、欧州では、香りまたは、味をフレーバーと定義し、日本では香気付与目的の物のみに認知して、食品香料とされている。さらに、各国の法規の中には、天然の定義がされているものもある。ポジティブリストの中にフレーバーの強化剤やフレーバー助剤が含まれている場合もある。

日本の場合は、香料は食品衛生法下に食品添加物たる香料として規制されている。そして、“着香の目的以外には使用してはならない”という使用基準が規定されている。

さらに、法を取り巻く環境の変化はと言うと、例えば食生活の多様化、食品流通の国際化によって幾度か法改正されている。しかし、本当に国際化しているかというと疑問の残ることは衆知の事実として、食品香料業界では受け止められている。

現に、各国のフレーバー規制による非関税障壁は長いあいだ問題とされてきた。国連の一つの組織による国際的な取り組みが着実に進行中である。

CACの目的は、消費者の健康の維持と、公正な食品防疫の確保であり、国際規格集(Codex Alimentrius:コーデックス規格と呼ばれている)の策定を含む食品規格計画を実施。

WTO(世界貿易機関)発足後、SPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)の発効に伴って、強制力が生じて、その意義が高まりつつある。

 

今回の事件で香料の世界基準として照会されているJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会)は、国際的に権威のある一四人の専門家、FAOのコンサルタント、暫定的アドバイザーから構成され、科学的な根拠に基づいた安全性評価の合理的なモデルを確立、食品添加物の規格の設定、汚染物質の評価なども実施している。

前述しているが、香料物質は他の食品添加物に比較して、通常の使用量が低く、安全性評価の優先順位が低く、さまざまな作業が進行していなかった。しかし、一九八七年刊行の“食品添加物の安全性評価の原則”で、香料物質もその安全性が検討される動きとなった。現に、“フレーバー物質の安全性評価に関する方法”が検討されつつあるのが世界の潮流。

今回の事件をキッカケとして、わが国の香料=食添加物業界および加工食品業界におけるすべてが世界的な潮流を視野に入れた変革を迫られている。

 

香りで競う新商品

食品香料は私達人間と古くから長い付き合いを保ってきた。昨今のアロマブームではないが、芳香は誰でも好む。加えて熾烈な新商品開発の一つのキーワードが風味と香りで、商品のインパクトと相まってその強さを一層競い始めている。

食品香料は法律的には、着香を目的とする食品添加物“香料”である。つまり、経口的に摂取され、“食べ物が口の中に入ったときに得られる総合的な感覚を付与するもの”で、フレーバーとも呼ばれる。

食品化学では、食品の味、匂い、舌触り(口に中での感触)の三つの感覚をまとめてフレーバーと言う。英語では、Flavour。日本語では“風味”“香味”と訳す。英語の「Flavour」は本来は感覚を表現する言葉であり、生産物である食品香料は、「Flavouring」が正しい呼称。日本では、一般に食品香料も“フレーバー”と呼んでいる。

食品の香りとは、単に一つの香気成分によってだけ成立していない。沢山の香気成分が独特の割合で混在、その食品特有の香りを形成している。昨今は、さまざまな加工食品の開発に伴い、加工工程上の損失や、嗜好性を高めるために使用されている。

着香の使用例は次の通りである。

(1)香りのほとんどない食品素材に嗜好性を高めるために付与する。

☆透明な炭酸飲料、キャンデー、チューインガム、氷菓など

(2)若干香りのある食品に、嗜好性を高めるためや多様化させるために香りを付与・増強する。

☆低果汁飲料、スナック、マーガリン、水産練り製品

(3)調理済み食品に調理や加工の香りを付与

☆惣菜、インスタント焼きそば、電子レンジ食品など

そして、強化補香目的、矯正着香目的…と、加工食品にはなくてはならない存在となっている。

食品香料は、主原料(主剤)として、天然香料や合成香料、さらに副原料(副剤)として溶剤、希釈剤などのを調合して作り出される。

1、天然香料

製法により、精油、エキストラクト、オレオレジン、アブソリュート、回収フレーバーと大別されている。これらは、天然の基原物質(動物、植物性原料)から香料を採取したもので、その方法は、水蒸気蒸留法、圧搾法、溶媒抽出法、超臨界二酸化炭素法や液化二酸化炭素による抽出法などの製法に分別されている。

2、合成香料

食品用合成香料は、ネイチャーアイデンティカルとアーティフィシャルの二つに大別されている。

(1)ネイチャーアイデンティカルフレーバーリング物質=単離香料や、化成品から合成されたフレーバリング物質で、人が安全に摂取している食品中に存在するものと化学的に同一のものを言う。大方の合成香料は、これに属している。

(2)アーティフィシャル物質=化学的に合成されたフレーバリング物質で、人間が安全と認められている食品中に未だ発見されていないものをいう。これらのアーティフィシャル物質の数は、非常に少ない。例えば、エチルバニリン、エチルマルトール、メチルフェニルグリシド酸エチルなど。あの懐かしいかき氷シロップのイチゴ風味が代表である。

日本は、食品行政では絶えず米国を目標にしてきたといっても過言ではない。

およそ一〇〇年前、わが日本は明治維新。そのころ、アメリカでは食品安全に忍び寄る大きな革命が起きていた。当時の有名な言葉は“暴露ジャーナリズム”。

一九世紀後半、人々は食品の大規模な流通開始とともにさまざまな問題に直面していった。偽り表示に始まりシカゴの食肉市場で他の肉・屑肉の混入問題。精油の嘘つき希釈、食品添加物の無秩序使用などなど。

人々は自分達の身を守る安全性に対する考え方のコンセプトとソフト開発の必要性を悟った。

こうした歴史を経て、現在のアメリカ政府のFDA原型やさまざまな諮問委員会的な働きをする制度などを構築していった。人民の健康を守るためにサプライサイド行政ではいけない。

わが国で起きているBSE問題から始まって輸入農薬汚染野菜、食品への抗生物質使用、産地偽り表示…。こうした一連の相次ぐ食品のトラブルの根は深い。

二〇〇二年もう二一世紀の加工食品開発の鍵は、世界標準に適合する食品の安全しかない。そのためには、世界に通用する人材育成・法整備・基準整備など産官学が一体となって取り組まなくてはいけない。

 

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