日本の食品市場を中心に食品や食品関連技術を専門としたアドバイザリーコンサルタント 久保村 喜代子

 
クボムラーナ

Kubomura Food Advisory Consultants Japan Food Innovation 久保村食文化研究所

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論文・出版物

惣菜開発トレンド06 パリのデリカテッセンにみる商品開発考

昨年11月末から10日ほど、美食の本場パリに滞在した。デリカテッセンの最先端を行くパリではモロッコ料理がブレイクしている。新しい食品の商品開発の三つのポイント、(1)アピアランス(外見)(2)テクスチャー(食感)(3)フレーバー(風味・香り)から見たモロッコ料理のトレンド考を紹介する。この三つは私たちの五感のセンスをみがこうとすると、大事なバランスキーワードである。

 

王宮料理「モロッコリアン」がルーブルに

地中海沿岸に位置するモロッコの料理はヨーロッパ、アフリカ、アラブの食文化を巧妙に取り入れ、素朴で味わい深い家庭料理がベースであり、アフリカの面白さとヨーロッパ人が押し寄せて行った時の文化も根付いているというテイストを併せ持っている。

パリの老舗デパート、ギャラリー ラファイエットにあるデリカテッセンではモロッコ料理がブレイクしている。メトロへ行く途中、ルーブル美術館の中庭、逆さピラミッドオブジェが並ぶ話題のガラスピラミッドの建物の地下でちょいと腹ごしらえのためフードコートに立ち寄る。いつも人だかりだが、その一角はモロッコリアン料理コーナーである。

なぜフレンチの国がモロッコなのか?

そもそも、フレンチのベースはモロッコの王宮料理がベースなのだそうだ。だから、誇り高きパリジェンヌも違和感無く受け入れられる。そして、世界で熱い人気を博している日本人の愛する和食をはじめ、多くの料理には隠し味に発酵して作られた調味料、そう、アルコールが存在する。

モロッコ料理には、なぜか、発酵調味料のおいしいお酢が隠し味に使われ、ふんだんに煮込んだ野菜料理も盛り沢山。昨今アジアからの健康ブームのお酢がドリンク剤まで浸透しているけれど、グルメの世界では複雑な風味、おいしさを求めたら、次の惣菜トレンドの調味料は“お酢”“発酵調味料”に間違いなしとにらんでいる。これは、モロッコ料理が日本人にも抵抗無く受け入れられる要素を持っているということである。

 

地中海ダイエットの本流

エスニック(熟練したスパイスブレンド)を多用するモロッコ料理は世界中に広がった地中海ダイエットの本流を維持する。苦味も甘味も強くなく、独特の香りと風味で食欲をそそる。モロッコ料理は世界の料理の中でも健康食で知られる。

最近、あの美食のイタリア人がスリムに見えると言われるほど世界人口の10億人もが肥満傾向にあるというデータが出ているとか。

そんな中、モロッコ料理は地中海沿岸の魚介類、インゲン豆やモンモス(ひよこ豆)などを使った料理が多く、食材は農産物から水産物まで豊富。風味付けにスパイスやハーブが効いているのが特徴で、暑い国のため畜肉・魚・野菜にじっくり火を通した長時間調理の伝統料理が多い。日本の家庭料理に例えたら、里芋の煮物のようなイメージである。フランス料理ももともとは長時間調理のものが多い。

そこで、長時間調理ができない主婦に代わって、ダイエッタリーなデリカテッセンとしてセミフィニッシュプロダクツ(中間加工素材開発)により、簡略化・簡便性ができてなおかつおいしさの訴求が可能なモロッコ料理がトレンドとなっているのである。長時間調理は惣菜化と相性がよい。

 

セミフィニッシュプロダクツ商品とは?

身近にはスープミックスやブイヤベースミックスなど、やはり調理時間の長いスープストック類がある。仕事帰りの主婦がこういうセミフィニッシュプロダクツの商品を購入して電子レンジやオーブンで簡単に調理加熱して、できたてのアツアツを家族にふるまう。こうした加熱調理にモロッコ料理は適している。

日本でもスープ類では缶詰のコーンクリームがあるが、パリの容器はびんである。重いが、あくまでホームメイドでおいしいものを手作りしようという伝統があるので、重くてもおいしいびん詰を買う。

日本と決定的に違うところは、消費者は簡便でも“おいしさ”には手を抜かないところである。

さて、セミフィニッシュプロダクツ商品は、大量調理用食品工業配合によって生産される。数人分でおいしい味を大量・工業化しようとすると、おいしさ作りのダメージが必然的におきてしまう。そんな時、微調整をフレーバー(熟練風味の調味と工程)で行うことになる。例えば、味噌汁を100リットル作ろうとした場合、塩味のテクスチャーはそのままに塩分含有量を減らさないと味のバランスがとれない。そこで、減らした塩の分量に合わせてスパイスを加える。

味を調える方法には塩味を基準にしたセイボリーフレーバーと甘みを基準にしたスイートフレーバーがある。セイボリーフレーバーは「SAVOR!(サボワ=おいしいわ!)」のキーワードであり、バラの花やレモンなどがある。レモンフレーバーにも国産、カリフォルニア、地中海、南アフリカと原産国・品種によって風味が異なるため、フレーバーテクノロジスト(風味つくりのマジシャン)の腕の見せ所となる。

西洋料理は獣肉も使用するため、香料は血なまぐさい臭いをすべて消さなくてはいけない。そうした理由から西洋の惣菜はさまざまなスパイスを使う。その際、そのものの風味を上手に醸し出す魔法の一滴、それとも薬でなくて味作りのマジック!なのである。

また、デリカテッセンは家庭に帰って温かくしたときに、ファーン!とおいしい臭いを醸し出さなくてはいけない。こういうシズル感の演出もスパイスやフレーバーは担っている。

日本では、スパイスやフレーバー(香料)をイコール添加物、イコール保存料と受け取られがちである。しかし、商品開発の中では、それらはおいしさの基本、風味作りの魔法でもある。

 

デリ開発は“アピアランス”(外観)から

“アピアランス”(外観)をどうするの?

日本のデパートの地下デリカ売場はさすがに外観、パッケージを考えている。デリカの主流であるスーパーでも、最近はこぼれないパッケージや温かい商品を温かく持ち帰れるパッケージなど工夫が見られている。しかし、それらはあくまで実用的な部分で、ショーウインドーで“おいしそう!”もしくは“高級そう”と心をくすぐるようなパッケージにはまだ開発の余地が残されている。

パリでは、環境への関心が市民レベルで高い。びんの容器も回収してリターナブルされる。容器も捨てると燃えないゴミになるのではなく、燃やせる日本で言うキョウギ(紙のように薄いパルプ)でできている弁当箱があった。アピアランスでは環境の訴求も一つの価値観となっている。サンドイッチ店の容器は、日本のキョウギを厚くしたような船形木製トレイ。日本の割り箸談義と比較したら、何が環境に優しいことでしょう?

 

バラのフレーバーは世界でブーム

ヨーロッパでは特に商品の「プーン!」と香るシズル感が重要視される。モロッコ料理では見ため・香りにバラの花を飾り、風味もバラ芳香味。私たち日本人にはバラはコスメティックで化粧品かリビンググッズのように思っている人々が大半。でもパリや欧米のトレンドとして、バラジュース、バラジャム、バラのハーブティーなど食用にしっかり使う。バラは世界の香料業界では、バラブームからトレンドになっており、アロマセラピー効果、食用・見ための効果、風味などの効果を持つ。

案の定、モロッコ料理はトッピングにバラの花を使う。パリシャルルドゴール空港売店には、フリーズドライのバラの花がびん詰で販売されていた。

モロッコ料理は安定した料理のため、デリカテッセンとしても優れている。食品メーカーがモロッコ料理を出来上がり、できたて中間加工素材:手抜きしたとて本物の風味再現するには、太陽をイメージしたフレーバー開発、エスニックの本随を掴んだようなメニュー開発がヒットのカギとなる。

消費マーケットの大多数を占める40~50代以下の世代は主食・副菜・汁物が揃った給食世代である。給食は大量調理幕開けの仕掛けであるセミフィニッシュプロダクツの産物。日本人は魚を多食する国柄だが給食には肉メニューが多い。こういう給食世代に、肉と魚が合致し、しかも素材の味を大切にする地中海料理、モロッコ料理に大きな違和感がないこともモロッコ料理には追い風だ。

 

デリの本随は“ハレ”需要に

デリの本随はハレの日に特別な物を食べたいということから出発している。日本でいうとお赤飯である。今日の日本の惣菜には簡便性、安全・安心、廉価は研究されているが、ハレの日のおしゃれ心をくすぐる“心”へのアプローチが足りないように見受けられる。

80年代から伸びて市場を形成した宅配ピザにしても、今日は「ピザでもとろうか」という感覚である。

パリで今一番人気の高いケータリングはルノートルのケータリングである(写真)。パッケージは有名デザイナーがデザインをしており、開けると前菜、主菜、デザートがコースとなっている。特注のナイフとフォーク、ワイングラスは本物である。ワインは「お好きなワインをご用意ください」というメッセージでガラスのグラスなのである。

パリジャンは特別な記念日、特別な来訪者が来る時には豪華なイメージのケータリングをオーダーする。そして、部屋を飾り、テーブルコーディネートをして、お洒落をしてお客とケータリングをワクワク待つ。

忙しいからケータリングではなく、ハレの日だからケータリングなのである。本来、食べるだけならプラスチックのナイフとフォークで済むが、それをしないところにお洒落心が見え隠れする。そしてそれがイメージアップとなっている。加えて、惣菜販売サイドには少しでも利益につながるかも?

 

デリカテッセンが“食育”の先頭を走っている

チーズと生ハムのイタリア人が細く見えてしまうという大変な時代になってきた。日本でもさまざまな形で食育活動が活発になってきている。日本の惣菜の上位人気惣菜はコロッケ、鶏の唐揚げ、餃子、天ぷらなど、揚げ物類である。経時変化に強い惣菜ということもある。しかし、生活習慣病の低年齢化が言われる中で、デリカも栄養士と組んだ食育活動までが業界の活動範囲になってきたと感じている。食育で健康・安全・安心を普及するということは、行き過ぎた情報や一時のトレンドに惑わされずに賢い消費者を育成することでもある。

ちなみにモロッコ料理のデリカテッセンに、ちりめんキャベツとニンジンの煮物がある。西欧風煮物をシチューだけと思わないで欲しい。アイデアはそこ、ここに存在する。すでに、モロッコ料理およびモロッコと日本が融合したニュージャパニーズデリも登場しそうな動きがある。

 

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