日本の食品市場を中心に食品や食品関連技術を専門としたアドバイザリーコンサルタント 久保村 喜代子

 
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Kubomura Food Advisory Consultants Japan Food Innovation 久保村食文化研究所

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惣菜管理士資格試験特集:「メキシコ料理」伝統的素材・風味を惣菜づくりに生かそう

現在、世界では食文化の伝導が注目されている。中でも先住民の伝統的食文化を色濃く継承するメキシコ料理は世界的なオーガニックトレンドと理解され、関心が高まっている。しかし、メキシコ料理が本来持つ素材選びや風味(フレーバー)がどのように作られているか、詳しく語られることは少ない。先住民が受け継いできた伝統的メキシコ料理の素材やフレーバーの詳細を見ることで、日本の惣菜作りへのヒントを探る。

 

近年、海外では世界無形文化遺産に登録される食文化が脚光を浴びている。2010年11月、ケニアで開催されたユネスコ政府間委員会で、無形文化遺産として新たにフランスの美食術、地中海料理、そしてメキシコの伝統料理など51件が登録された。わが国でも和食文化の登録に向けて世界へ発信するプロジェクトが進行中だ。

メキシコ料理は、最近のオーガニックトレンドや自然回帰志向と相まって、世界的に注目されている。米国では、有名料理研究家がメキシコ現地への料理教室ツアーを主催するほど。13年7月に開催されたアメリカ食品科学技術者学会(IFT)の附属展示会では、フレーバーのトレンドは南米食文化からの味づくりだった。その大きな潮流はメキシコスタイルの加工食品産業の躍進に起因する。

メキシコ料理が注目されるのは、その独特のフレーバーが持つ汎用(はんよう)性にある。

メキシコ料理の神髄はセイボリー(塩味の効いた)フレーバーであり、調理科学の観点から「味蕾(みらい)を刺激する紛れもないおいしさ」とされる。特にイタリア料理との比較では、フレーバーの利便性を専門家は示唆している。製品やメニュー開発に応用でき、新しい食品フレーバーの選択肢ともなり得るので、加工食品への応用も可能だ。

 

起源と歴史

メキシコ料理の起源は、中央高原で先住民がトウモロコシ農耕を営み始めた時代にまでさかのぼる。その後スペイン人植民者からさまざまな影響を受けたが、古代からの伝統を捨てることなく発展してきた。発展の過程で地域ごとにさまざまなバリエーションを生み、コメ、ニンニク、アーモンド、ヒヨコ豆、トマト、七面鳥、アボカド、ピーナツ、うちわサボテン、チョコレート、バニラなどを使って複雑なフレーバーが作られてきた。

先住民の生活を支えてきた料理にトルティージャがある。トウモロコシの粒を消石灰の水溶液でアルカリ処理し、メタテという石皿とスリ棒ですりつぶした生地を薄く延ばす。それを薪(たきぎ)を使ってコマル(テラコッタ製の加熱調理具)で焼くと、ヒッコリーをいぶした香りのフレーバーが現れる。

栄養機能面で、調理行程のアルカリ処理は、トウモロコシの硬い粒と皮を軟らかくするだけでなく、タンパク質の必須アミノ酸であるリジン、トリプトファン、ナイアシンの吸収性を上げる。この処理をすることで、トウモロコシを主食とする先住民が多く発症するペラグラ(ナイアシン欠乏症)の予防にもなる。

スペインによる征服に伴い、メキシコに小麦食文化が定着したため、小麦粉で作るトルティージャも生まれた。これは特にメキシコ北部や米国で人気があり、スナック菓子としても広く販売されている。近年はメキシコの製粉会社が中国にも進出、トルティージャの粉の世界市場開拓に挑んでいる。

 

味付け・フレーバリングに欠かせぬ唐辛子

料理の味付け・フレーバリングにはたくさんの種類の唐辛子が欠かせない。メキシコの唐辛子は生のものと乾燥させたものの二つに分かれる。生のものには、ハラペーニョ、セラーノ、ハバネロなどがあり、乾燥させたものにはアンチョ、干しブドウのような香りのパシージャ、昆布のようなグアヒーヨ、鰹節のようなチポトレなどがある。さまざまな種類の唐辛子を使うことで、五味(甘味、鹹味〈かんみ〉、酸味、苦味、辛味)を自在に作り出すことができる。

調理方法でフレーバーの取り出し方もさまざまだ。生のものでは、外側を焼いて皮をむくとまろやかさが出る。乾燥したものでは、お湯につけてうまみを浸透させてから、低い温度で風味を維持する日本料理の昆布のような方法を使う。それらをスープに利用したり、ミキサーにかけてペースト状にしたりすることで、さまざまな天然調味料がつくり出される。

昨今はメキシコでも天然調味料風のチリペーストも販売され、惣菜の風味改良剤として使われている。世界的な辛味ブームの中、より複雑なフレーバーづくりに欠かせないツールとして関心を集めている。日本でも、例えばラーメンのスープに一滴入れれば風味の増強になるだろう。

 

豆を使用したモーレソース

メキシコでは豆もトウモロコシと同様に主食であり、特にインゲンは紀元前から食べられてきた。スペイン人が家畜である牛や豚を持ち込むまで、豆は貴重なタンパク源だった。豆は日本のように甘く調理されず、塩味で煮る。

カカオ豆が発見されたのもメキシコで、先住民の「ショコラツゥル」という苦味のある薬用の飲み物に使われていた。カカオ豆に数種類の唐辛子、シナモン、クローブなどのスパイス、トマト、玉ネギ、パン、ナッツ、バナナ、レーズン、ごまなど20種類以上の素材で調理された「モーレソース」は、複雑で新しいセイボリーフレーバーを体験させてくれる。

 

米国におけるメキシコ料理の隆盛

米国風のメキシコ料理はテキサス州独自の古い郷土料理を指し、テクス・メクス料理と呼ばれる。隣のメキシコの食文化と相互に影響を及ぼし合い、牧畜文化と相まって大量の牛肉とチーズ(チェダーチーズやモンテレージャックチーズなど)、ヘッドレタス、香辛料をふんだんに使うのが特徴だ。

米国の外食産業でも、ナチョス、トルティージャ、タコス、チリコンカーン、タコサラダ、ファヒータスなどはすでに人口に膾炙(かいしゃ)している。特にタコスはトルティージャをVの字に揚げた“シェル”にひき肉やレタス、チーズを詰め込んだ米国独自のスタイルであり、メキシコでは見られない。

 

トウモロコシ使用惣菜に可能性 「新奇恐怖」を打ち破ろう

米国ではヒスパニック人口の増加で、メキシコ料理はフードコートの定番メニューとなり、給食に取り入れられてもいる。一方で日本では外食産業にメキシコ料理が定着しておらず、嗜好(しこう)に合致していないと一蹴されてしまう。その原因の一つには、メキシコ料理で使われる素材へのなじみがないことがある。

メキシコで主食とされるトウモロコシは、日本のスイートコーンとは異なり、白く大きな粒で、甘味が少ない。その一方で、さまざまな応用が利く。

メキシコの人々は、トウモロコシ主体の惣菜を“アントヒートス”(欲しくてたまらないという意味)と呼ぶ。多様な具材の入ったタコス、各種のサルサ風味に適したエンチラーダス、トウモロコシの香り豊かなタマレスなど、外食用中間素材の調味料や具材などの新製品開発にはうってつけだ。

現在、日本の惣菜売場を見ると、揚げ物や色とりどりのサラダ、煮物類が多く目に入る。食べ物の風味嗜好とは、生まれてから6歳までに決定されるという。それ以降自分が知らない食べ物はなかなか食べられない。これは「新奇恐怖」と呼ばれる本能的な行動である。

わが国の惣菜産業にもシリアスな転化が必要だと思われる。そのためには、食べ物への「新奇恐怖」を打ち破らなくてはならない。グローバル化とともに外食産業も進化し、いまだ食べたことのない新奇な食べ物を初めて口にする機会も増えている。今回紹介した、メキシコ料理における伝統を引き継ぎながら発展してきた料理やフレーバー、調味料を活用し、日本発の「メキシコ風惣菜」の開発を試みてみてはいかがだろうか。

 

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